プロローグ2

「コンコン」
無意味とは思いつつ、ノックをする。父の部屋に入るのは久し振りだった。
埃っぽい空気を入れ替えるため、窓を開ける。1月の冷気に身震いをする。
作業机と本棚、書類棚、それにクローゼット、。それだけの、シンプルな部屋だった。出張が多かった父は、月に数日しかこの部屋を使う事はなかった。
一つ一つに手を触れる。机の上には、家族3人で旅行に行ったときの写真が飾ってある。いつもは、恥ずかしいからやめてくれと言っていたが、今日は…写真立てに伸ばす手が震えているのが分かった。
「父さん…僕、来週センター試験だよ…」
泣いていいのか笑っていいのか分からない。
その時、
「ピーピーピー」
どこかから電子音が聞こえてきた。目覚まし時計やケータイとは異なる。音の出所を探していると、机の下に隠すように置かれているジェラルミンのトランクを見つけた。ボタンが点滅している。
引っ張り出して、ボタンを押してみた。すると、トランクが開き、ディスプレイが現れた。呆然と見ていると、やがてそこに、一人の男が映った。
「…君は?」
「…十文字嘉人ですが…あなたは…?」
TV電話システムのようだった。
「…君のお父さんは…?」
「…亡くなりました。今夜、通夜が…」
「…やはり、そうか…」
「どういう意味ですか? 何か知ってるんですか? あなたは一体誰なんだ?!」
片目が不自由らしいその中年の男に、僕は矢継ぎ早に質問を浴びせた。男は沈痛な顔をしたまま呟いた。
「君は、知らないのか…知らないままの方がいいかもしれないな…」
「何なんだ、一体! あんたは誰だ! 父さんは…!」
興奮して言葉が続かない。男は眉間に深い皺を寄せ、目を伏せている。しばらく沈黙が続いた。
「…教えてくれ。何か知っているなら、教えて欲しい。父は、父さんはどうして死んだんだ…」
なおしばらくの逡巡の後、片目の男は言った。
「…嘉人君、君は『ヒーロー☆コネクション』をいう組織を知っているかい?」
「…都市伝説…だろ…?」
「では、ジャアックという悪の組織は?」
「悪の組織って…引ったくりの集団かなんかじゃ…?」
「違うんだ。どちらも実在する組織なんだ。そしてその二つの組織は戦っている」
「ち、ちょっと待っ…」
「信じられないかもしれないが、君のお父さんは『ヒーロー☆コネクション』のヒーローだったんだよ。世界征服を狙うジャアックを倒すために、ヒーローとして戦っていたんだ」

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