プロローグ3

その後の男の話は、まるで小学生向けのアニメのような内容だった。しかし、言われてみれば、と思い当たる節も多くあった。
仕事の話をしたがらない父。母も働いていたが、決して楽ではない暮らし。事故のニュースにいちいち怯える母。たまに帰ってくる父と母は、見ていて恥ずかしくなるくらい仲が良かった。
それもこれも、ヒーローというほとんど冗談のような、いや、ボランティアのような危険な仕事に就いていたからだと言うのか…!!
「母さんも知っていたのに、どうして僕には教えてくれなかったんだ…?」
「君にも素質があるからだろう、ヒーローとなる素質が。君のご両親は、君を危険な目には遭わせたくなかったんだろう。でも、君がヒーローになる可能性は高いと思っていたんだよ…君はお父さんに似ている…」
「…交通事故というのは嘘なんですか…?」
「……」
男は答えない。その沈黙に、僕はある確信を抱き始めていた。
「父はジャアックに…殺されたんですね?!」
「…断定はできない。我々も調査中だ。君のお父さんと連絡が取れなくなった後、付近で交通事故に遭ったらしい…遺体が出たと報告があった。事実はそれだけだ」
「…僕も…」
「ん?」
「僕もヒーローに…父さんのことをもっと知りたい! 何故父さんがヒーローとして生きようと思ったのか、何故死ななければならなかったのか、知りたいんです!!」
「…君のお母さんは反対するだろう…」
「父さんは賛成してくれるはずです! 母さんだって、きっと分かってくれる。僕は死なない。僕は死にましぇん!!」
「……」
再びの沈黙。やがて大きな溜息の後、ディスプレイの中の男の表情が変わった。
「いいだろう。歓迎するよ、義人君。今日から君は『ヒーロー☆コネクション』のヒーローだ。一つだけ条件がある。お母さんには君の気持ちをキチンと伝え、納得してもらうことだ」
「…わかりました」
「では、落ち着いたら登録をしに、東京支部まで来たまえ。待っておるぞ。そうそう、わしは茶柱達太郎という。よろしく頼むよ」

こうして僕は大学受験を諦め、ヒーローとしての日々を歩む事となった。
それからしばらくの間、夢で父の顔を見ることはなかった。

END

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