最初の任務4

都庁の手前には、ちょっとした人だかりができていた。遠巻きにしたその人達が怯えたように見つめている先には、数人のジャアック戦闘員の姿が認められた。
うーむ。
正直言って、すでにヘトヘトだった。新宿中を走り回り、初めての戦闘も経験した。この上、さらに戦えるだろうか?
と、僕の意識は逡巡していた。なのに体は勝手に前へ進む。
「見つけたぞ、ジャアック!」
「なんだお前は!」
そう言ったのは、クラゲだった。ただし、ナゼか宙に浮いていて、非常に擬人的な姿をしている。茶柱と同じ様な眼帯までしている。そして今聞いたとおり、人間の言葉を話す。不自然なそれらの点を挙げられる一方、全てを当たり前のように受け入れている僕もいた。
「この世の正義を守るため、悪と戦う仮面の戦士、嘉人、参上っ!!」
「お前か、さっきからちょこちょこと目障りなヤツは! おかげでワシの素晴らしい計画が台無しだ! オイ、戦闘員ども! そいつをやっちまえ! ワシは戻って計画を練り直す!」
やけに説明的なセリフを吐いて、クラゲはどこかへ去った。
「お前の相手はこっちだイー!!」
疲れた体に鞭打って、まずは一人、蹴り倒す。
「次はオレだイー!」
こうなるともうムチャクチャだ。なりふり構わず腕をブン回し、拳の痛みに我に返ると、戦闘員は支え合いながらヨロヨロと逃げて行くところだった。こっちもすでに追いかける気力はない。
肩で息をしていると、
「へぇ〜、アナタって強いのね」
と、のんびりした声が聞こえた。振り向くと、同じくらいの年の女の子が腰に手を当てながら立っていた。
「ヒーローの素質アリ!って感じね」
女の子は一人でうんうんと頷きながら、勝手に納得しているようだ。
「…キミは?」
「あ、自己紹介がまだだったわね。ワタシは『ヒーロー☆コネクション』の連絡員、ヒロミ・グレーシーよ。アロハ! アナタは嘉人ね。これからヨロシクね」
「あ、よろしく」
「情報によると、クラゲノムは新潟へ向かったらしいわ。さ、ワタシたちも行くわよ!」
「え、行くわよって…」
「ところでアナタ、お金持ってる? 支給されるお金だけじゃ心許ないでしょ。足りない分はバイトして自分で稼ぐの。時間を見つけてこまめに稼いでおいた方がいいわよ。」
「そんな理不尽な…」
「ん? ナニか言った?」
「…いえ…」
「嘉人、アルバイトは探した? 各支部で紹介してくれるから、アナタも早めに登録に行った方がいいわね。今日は特別にあと10万円支給するから、さ、新潟へ行くわよ!」
ヒロミは元気いっぱいで駅へ向かって歩き出す。僕はフラフラになりながらも、ついて行くしかなかった。

NEXT

~Topページへ