道頓堀イカスミ地獄4

「だがな、ゲソノバ! お前は間違っている! 人々に力ずくでイカ焼きを食べさせようとしてもそれは逆効果だ! 本当においしければ、人は自然にイカ焼きを求めるだろう!」
「…ゲーッゲッゲ! 危うく騙されるところだったがな、嘉人! オレ様はそう甘くないのだー!」
そう言ってゲソノバはイカスミをブォーっと吐いた。何となく予想できたので、僕は今度こそよける事ができた。三度目の正直。と同時に仏の顔も三度まで!
「もう許さんぞ、ゲソノバ!!」
「ゲーッゲッゲッゲ。お前なんか一ひねりよーっ!!」
ゲソノバの触手を避け、2色に塗り分けられたヤツの顔を目掛けてパンチやキックを繰り出す。イカスミもかろうじて視界が遮られない程度にはで済んでいた。
しかし、今日のゲソノバは、今までとは少し違った。過去のくだらない作戦よりは少し真剣に怒っているようだった。
粘る巨大イカに、逆に負かされてしまうかも…と嫌な考えが頭をよぎったその時、突然チョコバーのことを思い出した。
チョコバーを急いで頬張り、体力を回復させながら攻撃を続ける。と! 余裕が出てきたのが逆に油断になり、ついにイカスミを顔に浴びてしまった。
「うわぁ!」
「ゲゲゲッソー! これでおしまいにしようじゃなイカー!」
思わずしゃがんでしまったのが良かった。イカのパンチは空を切った。バランスを崩したのか、慌てる声が聞こえる。低姿勢のまま突進し、タックルしてヌルヌルした軟体怪人を捕らえる。馬乗りになり、ボコボコにする。ゲソノバから力が抜けていくのが分かった。とどめだ! と思ったパンチは、地面を殴った。
「痛ぇ〜っ!!」
思わぬ痛さに飛び上がっていると、ゲソノバの声がした。
「ゲ、ゲ、今日はこの辺にしておいてやる! 覚えてろよ、嘉人っ!!」
どうやら、ヌルヌルの体液を上手く使って僕の体の下から逃げ出したらしい。
こうなっては今の僕には追いかける事はできない。仕方がない、またあのガソリンスタンドのお世話になるか。

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