暗黒風水の氾濫1

黄色は金運、暖色は恋愛運に関わる。玄関に鏡を置いてはいけない。ベッドは窓からなるべく遠い位置に。浴槽に水を貯めっぱなしにすると[気]が滞る。水晶を身に付けると、災いを代わりに受けてくれる…云々。
ほとんど興味がない僕でも、いつの間にか常識(?)として小ネタを知っているように、[風水]は巷ですっかり定着している。いろんな流派があるらしいし、中には眉唾な事を並べ立てて金儲けに使っている輩もいるそうだが。
そしてヤツら、ジャアックも独自の風水を編み出したらしく、近頃やたらと「暗黒風水、暗黒風水」と口にするようになった。

一番多いのは、前にも言ったが科学怪人ジッケーンの作る[暗黒ダシ]を使った作戦で、その地方の名物料理がターゲットになることが多い。先月の下関のふぐに続いて、秋田名物きりたんぽ鍋が狙われた。暗黒ダシの効果測定をするためだった。
そもそもの任務は、山口県防府市にあるDNA研究所の博士のためのお遣いだった。研究に使用する比内地鶏を秋田の生産者から譲ってもらってきて欲しいという簡単なものだった。
ところが秋田に着いてみると、せりやごぼうなどの野菜農家がジャアックの戦闘員に襲われているのを発見したのを始め、糸こんにゃくや舞茸までもが町から姿を消し、比内地鶏は何者かに奪われてしまっていた。一連の事件にジャアックが絡んでいることは間違いがない。盗まれた食材を思い浮かべてみると、きりたんぽ鍋の材料であることが予想された。しかし、肝心のきりたんぽはまだ被害に遭っていない。
嫌な予感を胸に抱きつつ、きりたんぽ屋のパトロールに向かうと、案の定、数人のジャアック戦闘員と、科学怪人ジッケーンが店を乗っ取っていた。きりたんぽ鍋に暗黒ダシを入れて、家で作る材料がないために、何も知らずにお店に食べにきたお客を使って効果をみる実験をしようとしていたのだ。
ジャアックの連中を蹴散らし、材料を元の場所に返して、やっと比内地鶏を譲ってもらうことができた。
防府の研究所で待っている博士に比内地鶏を渡し、ついでにきりたんぽ屋に置いてあった暗黒ダシも預けたが…暗黒ダシについての博士からの報告は、その後届くことはなかった。きっと忘れられてしまったんだろう。

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