父の影3

そして、照井半九朗、通称テリーだ。重要書類を運ぶ任務で初めて会った。その時テリーは、「キミの父上のことはよく知っている。よく2人で組んで任務を担当したよ。惜しい人材を亡くした…」と僕に言ったのだ。ヒーローになって初めて得た父の情報だった。心構えのなかった僕は、テリーの突然の言葉に驚いてしまい、リアクションができなかった。そんな僕の状態を知ってか知らずか、テリーはすぐ本題に入ってしまい、それ以上父の事を聞く事ができなかった。
テリーは父と一緒に任務をしていた。その事が分かっただけでも、積極的に聞いて回ってはいなかった僕にとっては大きな進展だった。僕はこの先もテリーと組む事があるだろう。焦らないことにしよう。
そしてそれ以来、僕は何かにつけて父の事を思い出すようになった。

悪武者怪人マカサドが、ワルガッソーのご機嫌を取るため、名古屋、防府、宮崎の名物で、首領の好物であるらしい[ういろう]を強奪するという作戦があった。それを阻止する任務中、ふと、父もういろうが好きだったなぁと思い出したりした。好物がういろう、というのも地味な話だが、好きなものは好きなのだ。他人にとやかく言われる筋合いはない。
ヒーロー☆コネクションでは、打倒ジャアックという大義名分の下に行う任務の他に、一般の人からの調査や警備などの依頼も引き受けている。それでも、宮崎のリトルリーグ、[ヒーローズ]で監督代行をするという任務は、珍しさから言えば1、2を争うだろう。大事な試合を前に、監督が熱中症で倒れてしまったのだ。いくら宮崎が暑いからと言って、2月の熱中症は有り得ない。調査の結果、灼熱怪人ワルストーブ監督率いる[ジャアックス]という、ジャアックの戦闘員が構成する野球チームが宮崎で合宿していることが分かった。練習中、熱くなったワルストーブの発する熱で、辺りは異様に暑くなっていたのだった。成り行きでジャアックスと試合することになり、僕に打たれたワルストーブが逆ギレし、土手での決闘となったのだった。
嬉々として野球をしている子供達を見て、幼い頃、父とキャッチボールをした事が思い起こされた。もしかしたらあの頃、父はまだヒーローではなかったのかもしれない。
僕が両親の会話の内容が理解できるようになった年齢になる頃には、父はすでに出張がちになっていた。

「父さん…僕は正しい方向に向いてる…? どうして何も教えてくれなかったんだ…」

END

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