ドキドキバレンタインデー1

札幌の喫茶店[ショコラ]に、白井ちよ子という店員さんがいる。彼女は、本人が大のチョコレート好きで、各地の名物チョコレートを雑誌で見つけては、僕に「行ったら買って来て」と言う。宮崎の日向夏チョコ、秋田のなまはげチョコに名古屋のみそチョコ…そして僕もなぜか任務地で珍しいチョコを見つけてはせっせとちよ子に運んでいた。普段気にしないだけで、意外にご当地チョコは種類があって、見つけ出すと面白いのだ。
今月何回目かの札幌任務で、いつものように「はい、お土産」と言ってチョコを渡すと、ちよ子の様子がちょっと違う。
「あ、あの…嘉人さん、いつもありがとうございます。これ、お礼です」
そう言って半ば押し付けるように渡されたのは、紙袋だった。開けようとすると、「見るのは後にして下さい!!」と怒られてしまい、よく分からないままに気まずくなったので、コーヒーを飲むのもそこそこに僕はショコラを後にした。
ちょっと離れたところで袋を開けてみると、中から出てきたのはマフラーだった。しかも、どうやら手編みらしい。むむむ…バレンタインデーには数日早いが…これはどう解釈したらいいのだろうか…
ラーメン横丁でバイトをしている札幌仮面RXに相談してみようかとも思ったが、気後れして、やめてしまった。

札幌で2月のイベントと言えば雪祭りだが、一般的に2月最大のイベントと言えば節分…のわけはなく、バレンタインデーだろう。受験シーズン真っ只中の迷惑な時期に、その日はやって来る。気にならないわけがない。特定の相手がいない場合は、もらえてももらえなくても微妙なのだ。
数日前に手編みらしいマフラーをもらって以来、何となく行きづらかった札幌が、今日、2月13日の任務地だった。
次々に襲われているカップル、絡んでいるらしいジャアック、そして今日はバレンタインデーイヴ…どうせまたろくでもない作戦に違いない。最近僕は、何となくジャアックのパターンを掴んできていた。
大通り公園に着くと、積もる雪を掻き分けて、何やらイベントの準備がされていた。興味をそそられて近付くと、スタッフらしき人に「関係者以外立ち入り禁止!」と、どこかで聞いたような事を言われ、追い払われてしまった。特に怪しい気配はなかったので、他の場所へパトロールに行くことにした。
繁華街や観光地を一周したが、ジャアックの戦闘員は見かけなかった。お昼も過ぎて、空腹を感じたため、僕はラーメン屋に入った。札幌仮面の店ではないところに。

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