ｼｬﾁﾎｺ､ｼ-ｻｰすり替え事件1

 ｢調子はどうかね? 嘉人くん｡
名古屋城の金鯱が､ｼｰｻｰになっているという怪事件が起きている｡
ただちに現場に向かい､ｼｰｻｰ研究家の屋根瓦教授と会って､指示に従うのだ!
調査費用5000円は送金してある｡
では､健闘を祈る!
HCJ 茶柱達太郎｣
金のﾁｬﾁﾎｺと言えば､名古屋には欠かせないｱｲﾃﾑだ｡一方､沖縄のｼｰｻｰも家の守り神として広く知られている｡ｼｬﾁﾎｺがｼｰｻｰになっている…これはきっとﾔﾂらの仕業に違いない｡

 名古屋に着いた僕は､とりあえず味噌かつを堪能した｡人々が襲われているのではない以上､緊急性は低いだろうと考えてのことだった｡最近始めたﾒｯｾﾝｼﾞｬｰのｱﾙﾊﾞｲﾄが､意外に効率良く稼げていて､ﾌﾟﾁﾘｯﾁなのだった､例え本部からの支給額が片道の交通費に足りなかったとしても｡
おなかも満足したところで､名古屋城へと向かう｡すでに周辺は騒然としていた｡警備員も出ている｡
｢何､ｱﾚ?｣
｢ありゃｼｰｻｰだがね｣
｢ｼｬﾁﾎｺはどこ行ったんね?｣
｢どえりゃぁことになったにゃぁ｣
｢ｼｰｻｰ? ｼｰｻｰって何?｣
｢何､ｷﾐ達､ｼｰｻｰについて知りたいのかね? ｼｰｻｰとはそもそも中国から伝来したもので､風水と深く関わっているんだよ｡その家や集落の人が何から守って欲しいかによって､ｼｰｻｰの向きも違ってくる…｣
はぁぁぁぁ｡僕は思わず大きな溜息をついてしまった｡そうか､ここにも風水が絡んでくるのか｡ｼﾞｬｱｯｸもなかなか勉強しているようだ｡
ところでこのおじさん､何やらｼｰｻｰに詳しいみたいだが､もしかしてこの人が
｢屋根瓦教授ですか?｣
｢そのとおり｡そういうｷﾐは?｣
｢ﾋｰﾛｰ☆ｺﾈｸｼｮﾝから派遣されて来ました! この世の正義を守るため､悪と戦う仮面の戦士､嘉人です｡よろしくお願いします!｣
｢おお､待ってましたよ､嘉人さん｡さて早速だが､あそこに置かれているｼｰｻｰは､どうも沖縄の首里城のもののようだ｡先程沖縄の知人に頼んで首里城を調べてもらったら､やはり歓会門のｼｰｻｰがなくなっているとの事だった｣
｢歓会門…｣
｢首里城の第一正門だよ｡石でできた門で､前に立つｼｰｻｰもまた､石造りなのだ｡そもそもｼｰｻｰとは…｣
｢あ､博士､そのお話は先程伺いましたが…｣
｢いや､まだ途中だったからね｡最古のｼｰｻｰは浦添市の…｣
結局僕は､魔除けの獅子についての講釈を小1時間も聞かされた｡始めはたまたま近くにいた数人の人々も聞いていたが､あまりにも話が長いのと､やはり場所柄､ｼｬﾁﾎｺの話ではなかったためか､最後まで付き合ったのは僕一人だけだった｡

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