朝鮮人参を奪回せよ!4

「イ、痛タタイー…」
「何にぶつかったイー?」
「そもそもお前の運転が下手なんだイー!」
「左ハンドルなんて習ってなイー! 右車線走るなんて知らなかったイー!」
「見つけたぞ、ジャアック!!」
大破した車から降りる数人の戦闘員の姿を見た瞬間、僕は立ち上がっていた。
「イっ!? 嘉人?! どうしてお前がいるイー?!」
「当りに来たのはお前かイー?」
「ひ、ひどイー! 死ぬトコだったイー!!」
「イーイーうるさいっ!! 市民が犠牲になったらどうするつもりだっ!」
「何イーっ?!」
「コイツに構ってるヒマはなイーよ! 早くエビータ様の…グフッ!」
ブチのめした。逃げるヒマを与えず、体重を乗せて力任せに殴る。全部で4イー。
立っているのが辛かった。さすがに走る車に正面からぶつかりに行ったのは初めてだ。
サイレンの音が近付いてくる。
「おい、嘉人! 大丈夫か?」
朴刑事の声だ。大分走ったのだろう、肩で息をしている。
「今回の作戦はエビータが…巨大な歩くエビの怪人なので、目立ちます。」
「解った。無茶しすぎだ。じっとしてろ。これを飲め。朝鮮人参ドリンクだ。改良されたものではないが、効く」
苦い。渋い。ヒーロードリンクの方が有り難い。ストックを持っていない事が悔やまれた。
数台かのパトカーが到着した。戦闘員はすでに逃げたようだった。
朴刑事は近寄って行き、紫の事故車の始末と、通行人の保護、周辺の警備を指示して、横たわる僕の元へ戻って来た。
「…私には息子がいた。5年程前、ある事件に巻き込まれて亡くなったが、生きていれば君くらいの年だ」
静かに語りながら、傷の手当てをしてくれる。僕も朴刑事の実直さに、父さんの事を思い重ねていた。
そして朝鮮人参ドリンクは、確かに効くらしい。

「ンフンフンフ〜ン♪ 久し振りに買い込んじゃった。任務のついでに買い物三昧できるなんて、ソウルってス・テ・キ♪ さぁってと、後は戦闘員を待つだけね」
「エ、エビータ様イーッ!! やっと見つけたイー!」
「ちょっと、警護班! 警護になってないわよ! 強奪班から連絡は?」
「何呑気な事言ってるイー! 俺達韓国から出られなイーよ」
「はぁ?」
「強奪班が無茶してすぐバレて、陸海空の交通手段は閉鎖されてるイー」
「それどころかアイツら、嘉人にも見つかったイーよ!」
「よ、嘉人ォ? どうして嘉人が韓国にいるのよ。見間違いでしょ」
「エビータ様イーッ!! これが朝鮮人参イー!! 早く逃げるイー!」
「あら、やっと戻って来たわね、強奪班! 早くお見せ! ほら警護班、何言ってるの、こうして朝鮮人参はちゃあんと…ウガッ!! 痛ーーーっ!! 何す」
ボフッ!!
「この世の正義を守るため、悪と戦う仮面の戦士、嘉人、参上っ!!」
「キィーーーッ!! お前達、やっておしまい!!」
「イーッ!!」
合わせて6イー。戦闘員自体は大したことないが、やはり先ほどのダメージは残っている。一度殴り倒した戦闘員が起き上がってしまうくらいの攻撃しかできない。それが仇になった。

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