コスモタワージャック ルクレツィアの策略2

コスモタワー周辺は騒然としていた。警官と警備員によって出入り口は封鎖されており、周囲はコーンと安全バーで簡易に囲われている。
まだタワー内に逃げ送れた人が何人かいるらしい。既に数人のヒーローが救助とジャアック征伐に向けて進入しているようだ。
僕も、ヒーローである事を説明し、タワー内部に入った。
中は停電しているのか、暗く静まっている。窓から射す光だけが頼りだ。目を慣らすため、僕はしばらく目を閉じていた。その時!
「わたくしはジャアック四天王、ルクレツィア。遅かったな、嘉人。待ちくたびれたぞ。このコスモタワーは我々ジャアックが占領した。取り戻したければ最上階まで来い!」
…ルクレツィア。ジャアックの首領ワルガッソーの頭脳と言われている。そんなヤツが、何の考えもなしにこんなところをジャックするわけはない。力で制しようとするジャキバとは違うのだ。嫌な予感がした。
ともかく僕は非常階段を探して、上り始めた。エレベーターは使えなかった。
…最上階にルクレツィアがいる。しかも、どうやら僕は待たれているらしい。目的は一体…!!
「…うぅ…」
「誰だっ?!」
「その声は…嘉人?」
「キューティー?!」
10階ほど上った辺りの踊り場の隅に、キューティ越後が倒れていた。慌てて駆け寄り、抱き起こす。キューティは傷だらけだった。
「嘉人、気を付けて。いつもより強いわ、ジャアックのヤツら…戦闘員も」
「キューティ、これを飲むんだ」
僕は持っていたヒーロードリンクを渡そうとした。しかしキューティは首を振った。
「私は大丈夫…少し油断してしまっただけ。嘉人、早く上へ…」
そう言うと彼女は気を失ってしまった。僕は彼女を背負い、一旦タワーの外まで戻り、警官の手に委ねてまた戻った。
キューティほどの実力の持ち主が失神するなんて、相当のダメージを受けたということだろう。何が起きているんだ…?
「ひっく、エーンエーン、ひっく」
上から子供の泣き声がする。駆け上がると、男の子が階段に座り込んで泣いていた。キューティを見つけた階よりも少し上だった。
「ボク、大丈夫か?!」
「ひっく、ママが…ママはどこ? ひっく、暗くて怖いよー、エーン」
はぐれて逃げ遅れたようだ。ざっと見たところ、怪我はなさそうだった。さすがのジャアックも子供には手を出さなかったのだろうか。
「ママのところへ行こう」
再び階段を下り、男の子を預ける。すぐに内部に戻り、上を目指す。予感がして、ゆっくりと上った。
「ここらか先は通さなイー!」
思った通り、戦闘員が現れた。キューティの言うように、ヤツは通常よりはるかに高い戦闘能力を持っていた。
キューティから聞いておいてよかった。いつものように闘っていたら、かなり苦戦していただろう。
「誰だっ!」
下からの気配を感じて振り向く。
「おみゃ〜こそ誰だ!」
ん? この声、話し方は…

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