最初の任務3

「イーっ…! 申し訳ありません、クラゲノム様〜っ!」
よく分からない何かを叫びながら、戦闘員がフラフラとどこかへ立ち去ろうとする。
「あっ、お前、ちょっと待っ…!」
「助けていただいてありがとうございました。ヒーローさんって強いんですね!」
「え? あ、いやー、はっはっは。これくらいは何でもないですよ」
「カッコイイー!!」
「ハッハッハ。では、お嬢さん、気を付けて」
…気が付くと僕は駆け出していた…
ち、ちょっと待て。落ち着け、オレ。
なんか変だぞ、さっきから。素面では言えないような決めゼリフを言ってみたり、パンチだのキックだのを律儀な掛け声とともに繰り出していたり。挙句の果てには「ハッハッハ、お嬢さん」ときた。まるっきりTVに出てくるヒーローモノをなぞっている、しかも無意識に。これは一体…
「ねーねー、ヒーローさんでしょ?」
ハッと気が付くと、僕は歌舞伎町付近まで来ていた。目の前には、いかにもガキ大将といった風情のランドセルを背負った小学生。なんでこんなところに小学生が…いや、それよりも、僕がヒーローだということがどうしてこの子に分かったんだ? この格好か? いや、この子は何の疑問もなく「ヒーロー」という存在を受け入れているように見える。そう言えばさっきの女子高生もそうだった。もしかして、実は『ヒーロー☆コネクション』って有名なのだろうか? 知らないのは僕だけだったり…
「ねーーってば!ヒーローさんでしょ?」
「あ、ああ、そうだよ」
「コマ劇の方で変なヤツが暴れてたよ。ヒーローならやっつけちゃってよ」
「わかった、坊や、ありがとう!」
颯爽と走っている…僕。どうも意識と行動が伴っていない。
とにかくコマ劇前に着いた。戦闘員はゴミを投げたり、一般の人を意味もなく追いかけたり、しょーもなく目立っていた。
「そこまでだ、ジャアック!!」
「お前は誰だイー!」
「この世の正義を守るため、悪と戦う仮面の戦士、嘉人、参上っ!!」
「なにイー? 嘉人なんて聞いたことなイー! 邪魔するヤツはやっちまうイー!」
…このやり取りはどっかで聞いたような…
「イーっ…! 申し訳ありません、クラゲノム様〜っ!」
気が付くと僕は戦闘員に勝っていた。またどこかへと逃げて行く戦闘員。
「あっ、お前、ちょっと待っ…!」
その時、足元に、さっきまではなかったいかにも怪しい紙切れを見つけた。くしゃくしゃのそれを広げて見ると、
「都庁前に集合! JAAK電撃怪人クラゲノム
と書いてあった。
「電撃怪人クラゲノム…?」
そう言えばさっきの戦闘員も、クラゲがどうとか言っていたような気がする。他にあてもないので、都庁前に行ってみることにした。

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