道頓堀イカスミ地獄3

走ってたこ焼き屋の前に向かう。ゲソノバはイカスミによる営業妨害を続け、何かを喚き散らしていた。
「ゲーッゲッゲ。なぜ人はたこ焼きばかりを食べてイカ焼きを食わなイカー!」
なんと。ヤツの怒りの元はそんなことだったのか。
「なんや、それ」
「そんなんで暴れてるのん?」
「アホくさ」
「たこ焼きのがウマいからに決まってるやん」
「アホくさ」
「アホくさ」
「もう、行こうや」
「アホくさ」
遠巻きにしていた野次馬も、ゲソノバのその叫びを聞いて、てんでに散らばって行ってしまった。
「ゲっ!! お前らなんて失礼なんだーっ!!」
野次馬の呟きを聞いてゲソノバは…また大量のイカスミを吐き…僕は再び視界を奪われた。
「お前らにもっとイカ焼きを食えーっ!!」
ゲソノバの喚き声を背に、ガソリンスタンドへ向かう。
「また待ってるでー!」
という、あの不吉なセリフは、これを予言していたとしか思えない。
「おっ、兄さんも好っきゃねー」
おじさんは笑いながら僕を誘導してくれる。
「いえ、決して好きなわ」
ブシューっ! ジャカジャカジャカーーーっ!!!
「…あ、ありがとうございました…」
「兄さん大丈夫か? 随分疲れとるみたいやな。よっしゃ、これ持ってき!」
おじさんがくれたのはチョコバーだった。
「疲れた時には甘いもんが効くねんて。どや、いくつか持っとくか?」
僕はその場で1つむさぼり、さらにありがたく3つほどいただいて、あのセリフを言われる前にゲソノバの元へと戻ろうとした。
「また待ってるでー!」
…言われてしまった。

対策を練る必要があるな。このまま戻っても、おじさんの言うように、きっと同じ事を繰り返すだけだろう。まずはゲソノバをなだめるために、イカ焼き好きということをアピールしてみるか。まぁ、決して嘘ではないしな。イカ焼きもたまには食べるし。よし。
チョコバーを食べて少し元気になった僕は、テンションを上げてゲソノバと対峙した。
「お前らにオレ様の気持ちが分かるかーっ!!」
しつこく繰り返すイカ。
「分かるっ!」
「何っ?! じゃあ聞くが、お前はイカ焼きとたこ焼きのどっちが好きなんだーっ!!」
「イカ焼きだーっ!!」
「ゲッソー! 見え透いた嘘を付くな、嘉人!」
「本当だ! 程よく焼けたイカ焼きにかけた、あの醤油の香り! サクサクとした歯ごたえ! 猫舌にも嬉しい薄焼き! たこ焼きにはないおいしさがイカ焼きにはたくさんあるじゃなイカ! あ、つい…」
「おお、お前は本当にイカ焼きの事を…!」

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