朝鮮人参を奪回せよ!2

「アンニョハセヨ。 すみません、あなた朴刑事知ってるか?」
「朴さん、知ってるヨ。さっきこの通りをあっち行ったネ。多分東大門ネ。お前、日本人か?」
「そうヨ。朴刑事と仕事するために来たネ」
「朴さん、いい人ネ。お前、邪魔するダメヨ」
「ダイジョブヨー。カムサハムニダ」
韓国ではある世代以前の人々はほとんど、日本語がわかるとみていいだろう。聞き込みにはこのオバちゃんの年齢を基準にしてみよう。
僕は朴刑事が向かったらしい、東大門へ足を向けた。広場の前で、踊っている数人の青年がいた。日本でもよく見る光景だ。
近付いてみると、かかっている音楽は日本語のHIPHOPだった。何も日本のHIPHOPじゃなくても…と思ったが、それは彼らの自由だ。
試しに話し掛けてみる。
「こんにちは」
「おぉ、日本語! お前、日本人?」
「そう。この曲、日本の曲ネ?」
「おぉ、お前、これ知ってる! いい歌、カッコイイネ!」
「えーっと、僕、朴刑事探してる。知らないか?」
「お前、朴刑事探してる? ナゼ?」
「用事ある」
「朴、ウルサイネ。えーっと、そう、説教する、朴。さっきも音楽低くしろ言われた。クソ」
「朴刑事、さっき来たか?」
「明洞行った思うヨ。お前、説教されるか?」
「されないヨー。カムサハムニダー」
「お前、日本語違うネー!」
ワッハッハ、と青年達が笑う声を背に、明洞へ向かう。日本語が違う? どういう意味だろう? 彼らにそんな事を言われる筋合いはない。朴刑事が説教したくなるのも分かる。一言言ってやりたいところだったが、今は任務が優先だった。
明洞。大通りはえらく賑わっている。日本の渋谷や新宿よりも人出がありそうだ。圧倒的に若者が多い中、怪しい動きをしている中年男性がいた。
忙しなく店に入っては出てくる事を繰り返すその姿は、大勢の中でも目立っていた。ピリピリと張り詰めた雰囲気を全身から発している。朴刑事ではないにしても、警察関係者かその対極にある人間な気がする。
朴刑事だとしたら、日本に要請してくるくらいだ、日本語はできるのだろう。思い切って話し掛けてみるか…
「カムサハムニダ…あなた、朴刑事か?」
「そうだが…君は誰だ?」
「日本のヒーロー☆コネクションから来たヨ。嘉人ネ。朴刑事と仕事する、言われたヨ」
「…君は私をバカにしているのかね」
「え…?」
「普通の日本語を使いなさい」
さっきも踊る青年達にそんなような事を言われた。何がおかしいんだろう?
「それとも君は韓国の人間なのか?」
「違うネ、ワタシ、生粋の日本人ネ」
「自覚がないようだが、君は韓国訛りとでもいうような話し方をしている。非常に不愉快だ」
!!何と!! そういう意味だったのか!! 慌てるが、どうにもならない。しかし、冷静になってみると、朴刑事の日本語が正しく、キレイであることに気が付いた。
「す、すみません! 気を付けます!」
「…こんな若いのを派遣してくるなんて、本当に大丈夫なのか?」
朴刑事の信頼は簡単には勝ち取れそうになかった。

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