朝鮮人参を奪回せよ!3

「あのぉ、人参を奪ったのはジャアックだと聞いていますが…」
「朝鮮人参だ。それも、国を挙げて極秘裏に開発されていたものだ。今日の未明、国立科学研究所から持ち出された。監視カメラの映像から、強奪犯はジャアックの戦闘員と判明した。セキュリティシステムを力ずくで破ったヤツらは、見事な逃げ足を見せた。すぐに交通封鎖をしたので、国外へは出ていない。この辺りで、多数の目撃証言が得られている。韓国ではまだジャアックが一般市民には認知されていない上に、盗まれた朝鮮人参の事は国家機密だ。あまり表立って動く事ができない。そこでジャアックに詳しいヒーロー☆コネクションに協力を要請したのだ」
…その割にいかにも聞き込みですって感じで相当目立ってたけど―現に僕が朴刑事を見つけられたくらいだ―それは言わないでおこう。
「何か質問は?」
「朝鮮人参は、普通の人参とは違うんですか?」
「…その程度の知識しかないのか!」
「…すみません…」
「古くから漢方薬として滋養強壮、鎮痛、胃痛など、要するに万能薬として用いられてきたが、最近の西欧の研究でも、活性酸素の抑制や血管への効能、精神安定化作用などが確認されている。」
「極秘開発というのは?」
「うむ。朝鮮人参のパワーを高め、さらに、筋肉に影響を及ぼす効能をプラスして、より効率的に効果を得る事ができるものを作っていた。実験段階ではあるが、今回強奪されたものも摂取すると、強靭な肉体を作る事ができる」
「ジャアックの狙いはそれか…」
「見た目は普通の朝鮮人参と同じらしい…と言っても君は判らないか。人参というよりは、縦長の根生姜に近い。」
「判りました」
「では、私は引続きこの付近で目撃情報を収集して、ヤツらの居場所を特定する。君はあちら側での捜査を頼む」
「はい」
その時!
「キャアーーー!」
「ト、トウミョーッ!」
「ウワーーーッ!!」
「ウィホンハダッ! トマンチョラーッ!!」
少し離れた場所で悲鳴が上がった。すぐに駆けつけると、どこかで見たような紫の車が、人出の多い通りをかなりのスピードで蛇行しながら走っていた。意図的にジグザグに走っている訳ではなさそうだ。ハンドル捌きには余裕がなく、いつ事故が起きてもおかしくない状況だった。
「何だ、あれは」
やっと追い付いて来たらしい朴刑事の声はすぐに背後へ遠ざかる。僕は車へ突進した。直線に走り込み、暴走車の前に回る。
ドスッ!!
「くっ…!!」
イチかバチかで体当たりしたが、車は止まらなかった。確実にスピードは落ちているが、迷走っぷりは増してしまった。軽い脳震盪。それでも全身の痛みを振り払ってもう一度走る。
今度は少し幅のある場所で、横から突っ込んだ。
ボフッ!!
「うぐぅ…」
頭が真っ白になる。上下左右が判らない。ムリし過ぎたか?
しかし、紫の車は止まった。

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